北海道の根室では、昆布の季節は一家をあげて、家財道具をもって昆布番屋に出稼ぎに行きます。
学校では先生の方で宿題をつくって各家庭にくばり、次の宿題をもって行って答案を集めるときいています。
その後どんな方法が講じられたかきいていません。
いつか札幌旅行のついでに昆布場の引揚船に乗った時にみた小学生も中学生も、物言わぬオホーツクの海のように無表情で、何か耐えがたいものを、じっと腹の底に沈めているといった顔つきでした。
番屋におりる人があるときは、陸に向ってスピーカーから「Aさん、お客さんだゾー」と呼び出しをすると、ポンポン舟が走ってきます。
番屋から定期船に乗る人のあるときは、莚旗をたてて「オーイ、オーイ」と追ってきます。
今は羅臼と北見領のウトロまでの間は立派な観光船がありますから、首の痛くなるような絶壁の風景を見ることはできますが、頬かむりをした船長さんの話などはきくことができません。
羅臼の裏山には、時々熊がきて人間を見物しているというので、いつかその裏山の熊狩について行ったことがあります。
しかし、裏山の陰の人家の物音のするところに、熊の穴があったのにはあきれました。
人間と熊とが背中合せに棲んでいるのも、やはり知床であればこそと思いました。
1661メートルの羅臼岳は、頂上の雪が吹き飛ばされてなく、麓ほど雪が多いのです。